Art;谷崎潤一郎「陰翳礼讃」~松岡正剛「千夜千冊」60
駐在前は通勤で結構本が読めたのですが、最近は読む本の数が激減していています。出張の時は移動が長いんで、数冊本を持っていくのですが、今回の一冊は、谷崎潤一郎の「陰翳礼讃」。
MasaharaさんがBlogで影と陰に触れてから、大筋だけ読んで放ったらかしにしていた谷崎潤一郎のこのメジャーな本を、まあ一度やっぱり通読しておくか、と思って、飛行機に持ち込みました。その後も日本建築の陰と間に触れるエントリーをされていて、面白いなあ、なんて思っておりました。「陰翳礼讚」は、昭和8年から9年にかけて「経済往来」に書かれたもので、日本家屋がもつ陰から出る薄明の美、を紹介しています。日本家屋の美が陰からやってくるものだ、という点、その通りだと思いますが、しかしこの「陰翳礼讃」、谷崎潤一郎の文章としては荒削りというか完成度低くないか、と心にストンと落ちてこない。この中公文庫版には、懶惰の説やら他の随筆も含まれているのですが、これまた内容への納得感がないものや、文章が粗すぎやしないか、と私の美意識とはあわないなあ、なんて偉そうに思った次第。
松岡正剛さんが千夜千冊で、「『陰翳礼讚』という文章をもって、谷崎が日本の美学や日本の美意識をなんとか説明してくれたなどとは、おもわないほうがいい。」としたことに納得。そして「逆に、谷崎を本来に帰って援護するのなら、われわれは『吉野葛』や『芦刈』にこそ陰翳礼讚をさがすべきなのである。」と。 谷崎潤一郎の小説作品にこの陰翳という地が敷いてあることを思えば、さすが。
スポンサーサイト